突然の休職宣告 ~小田編⑨仕事をお休みするタイミングとは~ | 札幌のカウンセリング こころの羽

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突然の休職宣告 ~小田編⑨仕事をお休みするタイミングとは~

こんにちは。札幌市北区にある『カウンセリングルームこころの羽』のスタッフ小田です。

前回までのエピソードはコチラ↓
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うつ病体験記8

会社の産業医と面談をする前夜、初回のカウンセリングの時のように泣きっ放しにならないよう、自分で認識している症状をA4用紙1枚にまとめました。

前段に勤務歴と管理職歴、転勤時期、カウンセリング歴(この段階では3回目のカウンセリングを予約していました)、クリニックの受診日(初回限りで受診をやめたクリニック名と新たに予約したクリニックと予約日)を記載して、1出勤までの状況、2勤務中、3休日、4睡眠・食欲、5現在の気持ち、の5項目に分けて、箇条書きで記載しました。

5現在の気持ちの結びはこのように記載しています。「かろうじて出勤し、最低限の仕事をしていますが、毎日「どうしたらいいのだろう」と焦り、悩んでおり、このままできないことが増えていって、一線を越えてしまうことを恐れています。」

この1枚を記載し、改めて読んでみると、涙が出てきました。なるべく客観的かつ冷静に、項目ごとにまとめましたが、文章で「できなくなったこと」の数々を認識すると、「どうしてこんな風になってしまったんだろう。今まで生きてきた中で、もっともっと大変な状況を乗り越えてきたはずなのに…。恵まれた状況の中で、私の脳はなぜブレーキをかけているんだろう。」。

産業医には当日の空き時間に読んでもらうようこの用紙を渡し、いよいよ産業医との面談の時間がやってきました。面談時間は1時間で、上司からは、「面談が終了した段階で、君が嫌でなければ、君と先生がいる場で、私も先生から話を聞きたいから呼んで欲しい。」というありがたい言葉もいただいていました。限られた時間で、なるべく冷静に先生に状況をお話ししました。先生は、私の話を50分程度、ゆっくりと聞いてくれた上で、こう言いました。

『今は、過去の出来ていた自分を一度忘れてください。あなたにはお休みが必要だと思います。』「それはできません。」『なぜそう思うのですか。あなたのお友達や部下が今のあなたのような状況になっていたら、あなたはどうしますか。』「友人や、部下、他人になら休むよう勧めます。でも自分にはできません。まだ大丈夫だと思うし、他と違って余裕のある部署でもありません。迷惑をかけたくないんです。」『なぜですか。あなたがいない分の対策は組織が考えることです。幸いなことに早めにご自分の変化に気付いて対策を取ろうしている。体力のゲージが50%のうちに休むことができれば回復も早い。これが0%近くなってしまえば、回復には年単位の時間を要することになります。』「…………………。休むとはどのくらいの期間ですか?」『3か月は必要かと思います。』

3か月の休職。それは私が思ってもみない言葉でした。その期間を聞いたときに、前のめりになって呻くように泣きました。私が泣いている間に、休職が必要である旨を上司に報告して必要な手続に入ろうという雰囲気になっていましたが、私は、「考えさせてください。」とその動きを止めました。先生は、『何を考えるの?』と聞きましたが、「とにかく、少し時間をください。」と言うのが精一杯でした。

最後に先生は、私が提出した書面を指さして、『この「一線を越えてしまう」ってどういう意味ですか?』と優しく聞きました。私としては、仕事を放り出して突然失踪してしまうとか、どんどん能力が落ちてしまって取り返しがつかない失敗をしてしまうとかそういう意味で記載したつもりでした。でも、なぜかその問いを聞いたときにドキリとしました。ドキリとしながらも、そう答えると、先生は優しく『そうですか。確かに失踪してしまうのは大変なことですけど…。それよりも、大変なことを考えないでくださいね。』と言いました。結局、その場に上司を呼ぶこともできないまま、涙を拭って少し落ち着いてから、裏玄関からそっと帰宅しました。

今、冷静になって思うことは、この時に休んでいなければ最悪の事態もあり得たなと思うのです。自分の確定的意思によるか、発作的なものか、交通事故などの不意のものかは別として、そのような危険性があったことは否めません。それほどまでに心身ともに疲弊し切っていたのです。もう、正常な判断は自分で下せない状態でした。産業医との面談がこのタイミングで無かったらと思うと、改めて感謝の気持ちしかありません。

(次回へ続く…)

◆岡本から、ひと言コメント

仕事への意識が高い方の傾向性として「お休み」をとることに抵抗感が強い場合があります。

実際に小田さんの場合も、「3ヵ月の休職」を勧められたときにも「できません」とリアクションをとっていたようです。

うつ病などの精神疾患と呼ばれる症状は、脳の疲労蓄積が要因となる場合があります。

これは、日常生活や日常の仕事などで受けるストレス(前向きな緊張状態や意欲も含め)が心の持つ許容量を超えて蓄積されることにより、脳が能力に制限をかけてしまう状態です。

実は、この状態は、多くの日本人の働き方で「日常的」に発生しているのですが、ほとんどの方は「当たり前」ととらえてしまっています。

私たちの頭は、仕事をすればするほどうまく働かなくなってしまうもので、ある研究では、週30時間を越えて働くことで能力にマイナス影響が出始め、週60時間以上働くと、普段まったく働いていない人と同じくらいの能力しか発揮できなくなると言われています。

この状態も一時であれば何とか日常生活に支障が無い状態を維持できると思いますが、継続的に労働時間が長い状態が続くと「脳がブレーキをかける状態」になってしまいます。

これは、無意識レベルの「本能」が「これ以上働くと身体にも悪影響が出てしまう!」と認識してブレーキをかけているとも言えるかもしれません。

心や体に「疲れ」を感じて、早い時点でお休みをとることが出来れば回復が早まることは、多くの研究や事例でも分かっています。

「あれ?おかしいな…」と思ったら、自分一人で悩むのでは無く上司や専門家へ相談してみることも長い人生を歩むうえでは大切な一歩かもしれませんね(^^)

『カウンセリングルームこころの羽』岡本教兵

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