こんにちは。札幌市にある『カウンセリングルームこころの羽』の岡本です。
前回は、私が「うつ状態」(当時、医師の診断を受けたわけではないので、あえて「うつ病」ではなく「うつ状態」と表記させていただきます。)になるまでの経緯を書かせていただきました。
前回までのエピソードはこちら↓
今回は、いよいよ「うつ状態」になったところからを書かせていただきます。
◆それは、「自信」ではなく「過信」だった…
前回までのエピソードで私の高校時代や音楽で食べていくことを目指していたことを書かせていただきました。
そして、高校卒業が目前になった高校3年生の2月。
学校が休みの期間に入り、母と夕食を食べていたときに「プロになるの無理だわ」とひと言、口にしたことで私の心は崩れ始めます。
それまでは、自分に自信を持つことは芸能関係で成功するために必要なことだと考えていたので、どんな状況であれ「自分には音楽がある」「必ず成功できる」と言い聞かせていました。
今思えば、そう考えるためには「根拠」が必要でした。
例えば、「誰よりも基礎練習を行っている」「コンテストに出場して優秀賞を受賞した」「オーディションに合格して事務所の候補生としてレッスンを受けている」など客観的に見ても「事実」と思えるものが「根拠」を持つためには必要です。
私の場合の「自信」は、そういった根拠がなく、ただただ自分に言い聞かせているだけの状態…
つまり「過信」だったのです。
人が自分に自信を持つために「根拠」は重要なものだと今でも感じます。
根拠を持たない自信は、「過信」である可能性も高く、仮に過信ではなかったとしても何かのきっかけで「崩れてしまう」脆い自信だと言えます。
当時の私にとっては、高校2年生の頃に友人と共催したLIVEイベントの成功が「根拠のある自信」だと盲信していたのだと思いますが、バンドのメンバーがそれぞれの道へ散っていく状況が私の唯一の「根拠」を簡単に崩していきました。
◆壊れた心で見える景色
これは、私の“イメージ”ですが、当時のことを振り返ると記憶が「白黒」なのです。
色がないんです。
ある日の夕食で壊れてしまった心は、崩れ始めると簡単に全壊していきます。
「食欲」「睡眠」「やる気」など、それまでの当たり前が一瞬にして当たり前ではなくなりました。
テレビを眺めていても笑うことはありません。
面白いと感じる感情自体がなくなってしまったような感覚です。
食事は喉を通らず、頭の中では誰かの声(自分の声?)で「お前にプロは無理だ」「お前にプロは無理だ」と聞こえてきます。
この状況になると本当に「聞こえて」くるのです。
いわゆる幻聴という状況なのかもしれませんが、「やめてくれ!」と叫んでも、その声が止まることはありません。
同級生に会ってしまうようなことがあれば、僅かに残った羞恥心ですら自分の命を終わらせる引き金になりそうで、家から一歩も出られなくなりました。
人の目が恐いんです。
親が声をかけてくれる言葉も自分の耳には入りません。
恐らく、色々と励ましてくれていたとは思うのですが、今振り返ってみても「まったく覚えていない」のです。
記憶力、判断力、行動力など、人が生きていくために必要であろう能力のすべてが極端に低下していました。
布団の中にもぐって、自室にこもって。
かろうじて食事の時間には何口か無理やり飲み込むように食べ、親の顔を見れば怒鳴り、泣き出す。
そんな生活を繰り返すようになりました。
◆“今の岡本”が振り返ると…
当時の私は、自殺をする元気すらないようなどん底の状態で、目に入るもの、耳に入るもののすべてがストレスでした。
今思えば、「感覚過敏」と呼ばれる状態だったのかもしれません。
時計の秒針の音がうるさく聞こえて眠れない。
目に入る情報が頭痛を誘発する。
そんな状況だったと思います。
本来であれば、このタイミングでカウンセリングを利用するなど、第三者に話を聴いてもらえれば、後々にも長引かずに済んだのかもしれませんが、当時は今から20年近く前だったので、『カウンセリングルーム』自体知りませんでした。
心療内科の存在もよく分かっていなかったので「精神科」が唯一の選択肢だったのですが、「原因」が明らかではあったので、「病院に行く」という選択肢も思いつきませんでした。
「病院」=「先天的なものを治療する場所」というイメージを持っていたのだと思います。
このように考えると札幌もこの20年でカウンセリングが利用しやすい状況が広がって来たと感じます。
初めてカウンセリングを利用するときに「この悩みは、対象にしてもらえるんだろうか?」と不安に思もうことがあるかもしれませんが、『こころの羽』の場合は、どのようなお悩みでご利用いただいてもOKです。
心療内科や精神科と併用してくださる方もいらっしゃいますし、「病院に行きたくないから…」「薬を飲みたくないから…」という理由でご利用くださる方もいらっしゃいます。
お悩みの内容や個人差によって解決や改善、寛解までにかかる期間は様々ですし、カウンセリングをご利用いただくことで一時的に症状が悪化してしまう方も中にはいらっしゃいます。
それでも、「一人で悩む」状態を続けるよりは早い時点で「今、何が必要か」はイメージいただけるのではないかと思います。
私の場合、うつ状態に陥ったときに実感したのが「何をしたら良いのか分からない」でした。
今のままではダメなことは分かっているけれど、だからと言って何をしたら良いのかが全く想像できないのです。
この状態だと身近な存在(私の場合は母)からアドバイスをされても聞く耳が持てません。
やはり専門家の意見というのが一つの突破口になるのかもしれませんね。
『カウンセリングルームこころの羽』岡本教兵