こんにちは。札幌市北区にある『カウンセリングこころの羽・札幌本店』の岡本です。
「緊急事態宣言」や「外出自粛」「休業要請」など新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対策に伴い全国的に小中高校の休校になるなど、大人も子供も…社会人も学生も…今までに経験したことのない状況に直面しています。
私が生活している北海道札幌市の場合だと「2度目」の緊急事態宣言で「我慢」という負担、ストレスはすでに限界を超えている人が増えているのではないかと感じます。
それでも「命を守る」という気持ちで必死に耐えるしかない…というのが現状の私たちにできることなのかもしれませんね。
そんな状況のなか、つい先日、私自身が2歳半になる息子の子育てを通して体験した「失敗」は現状のコロナ自粛に悩む親の皆さまにも当てはまるのでは…と感じましたので、具体例を交えながらご紹介してみようと思います。
◆ありふれた日常の出来事のなかで
私の家族は、現在、幼い子供2人を育てている子育て世帯と呼ばれる環境です。
もうすぐ5歳になる娘と2歳半の息子を妻が仕事の手伝いをしつつも子育ての中心となって対応してくれています。
本来であれば、娘は幼稚園に通っているはずなのですが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に伴う小中高の休校に連動して幼稚園もお休みになってしまったので、自宅にいることがほとんどの生活になっています。
そんなある日、私が休日だったため、娘と息子と一緒に遊んでいると子供たちがふざけ合っている弾みで息子の足が娘の顔を蹴ってしまう状況に…。
近くにいた私はとっさに止めたため、とくに怪我をすることもなく、娘も泣き出すようなこともなく済んだのですが、「これは危険だな」と感じた私は息子に説教をすることにしました。
我が家では、妻も含めて子供達への「説明(説教?)」は、しっかり対応する傾向が強く、「(子供が)きちんと分かるまで説明」が基本です。
この日も私は、息子に対して「なぜ叱っているのか」「どんなところに気をつけて欲しいのか」を伝えていたのですが…。
◆「はい」と言わせたかった親の気持ち…
基本的には、こちらの話を理解してくれているのか反省した様子ではありました。
そして、「ちゃんと分かった?」と質問すると頷いたり、手を挙げることはするのですが、「はい」という返事はありません…。
これは、うちの息子がまだまだ言葉を沢山話す段階ではない…という発育、発達上の理由もあるのだと思いますが、このときの私は、「はい」と言わせたかったんですね…(汗)
やはり、日常生活のなかで「はい」という返事は凄く大切だと私自身が思っているので、ついついこだわってしまったのだと思います。
そして、この説教が「本来の目的」から脱線していくこととなります…。
本来の目的は、子供たちが怪我をしないことだったはずなのに、いつの間にか「はい」と言わせることが目的に…。
今になって冷静な気持ちで振り返ってみると「こだわるポイントを間違えていたな」とすぐに感じられるのですが、この時は、どうしても「自分の思い通り」にしたい気持ちが先行していたのだと思います。
反省の意味も含めて自分自身の心境を振り返ってみると、ここ数ヶ月の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による影響で心理的な不安を感じたり実際の対策として気を張っている時間が長くなったりと「ストレス」がかなり増えている状況が重なっていました。
そんな中で自分の価値観で「大切」だと思うことが目の前にあり、そのことまで「思い通りにならない」という状況になったときに「なんとしても理想的な決着にしたい」という想いが強くなり過ぎていたのだと思います。
このときの私の理想としては、息子が「はい」と返事をしてくれて「ちゃんと言えるじゃないか」と絶賛をして息子も嬉しそうにしている…というものでした。
実は、この出来事がある数週間前に「ごめん」を言えるように同じような流れで説教していたことがあったのです…その「成功体験」を再現したくて息子に「はい」と言わせることに異常な執着をしてしまいました…。
◆上手くいくパターンと上手くいかないパターンの違い
まず、そもそも息子に話を聞き入れて行動にうつすだけの心理的な余裕があったのかが重要なポイントですよね。
以前、「ごめん」を言えたときには、その余裕があったのかもしれません。
それに対して、今回は、息子としても「わざとではない」という状況のなかで急に親から叱られるシチュエーションになってしまったため、気持ちが追いつかなかった可能性が考えられます。
そして、私が思い描いている「理想的な決着」を息子が想像できるわけもありません…。
その結果、息子にとっては「苦痛」を与えられるだけの時間になってしまったのが今回の説教が上手くいかなかった理由の一つだったと考えることができます。
(この出来事の後に妻から「濁点が入る言葉は得意みたい」との追加情報も聞くことができました「頑張れ」「ごめん」「大丈夫」などは上手に言えるようになってきているという彼の傾向からの分析でした。
このことに私は気付いておらず、上記のような比較的長い言葉も話せているので「はい」くらい言えるだろうと思い込んでいたことも今回の事例が上手くいかなかった理由の一つになりますね…反省。)
◆同じようなことやっていませんか?
今回の具体例は、私と息子(2歳半)とのやりとりですが、仮に小学生や中学生、高校生のお子さんが相手でも当てはまる部分があるかもしれません。
親の方は、「理想像」が明確にあるため、それを子供にも実行して欲しいと考える。
しかしながら、子供の方は「説教」されている状況自体が苦痛なので、早くその場を逃れることを考える。
その結果として、親が伝えたい意図が上手く伝わらず、すれ違いが発生してしまう…。
このような状況は、心理カウンセリングでも活用される「交流分析」のなかの「PACモデル」に当てはめてみると分かりやすくなるかもしれません。
この「PACモデル」とは…
精神科医エリック・バーンにより提唱されたコミュニケーションにおける「価値観」を体系的に表した理論です。
PACというのは「Parent(親)」「Adult(大人)」「Child(子供)」の頭文字をとってあらわされており…
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P(Parent):これは人々が、無意識のうちに両親(または親の代わりとなるもの)の行動パターンを模倣をして、行動し、感じ、思考する状態。例えば、影響力のある人が怒鳴りつけているのを見て、それが有効であると幼い頃に学んでいたら、その人も欲求不満から人を怒鳴りつけるかもしれないことが挙げられる。
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A(Adult):これは、「今-ここ」でどのようなことが起きているのかについて人々が行動し、感じ、冷静に思考する状態。この状態では、長年生きてきた大人としての人間の経験、知識が活かされ、人を行動させる。このA(Adult)の自我状態では、自身は、現実における客観的な評価の対象として見られる。
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C(Child):これは人が子供の頃にどのように振舞ったかと同じように、行動し、感じ、思考する状態。例えば、上司から怒られている人は、まるで子供の頃に行ったように、その上司を見下し、屈辱や怒りを覚えるかもしれないであろう。
(Wikipediaより抜粋)
この考え方を当てはめてみると私は「P」の状態で「C」の状態の息子に説教していたことがわかります(汗)
それは伝わらなくて当たり前かもしれません…。
このように実際に「親」と「子供」の立場ではない場合にも「交流分析(PACモデル)」は様々な場面に当てはまります。
上司と部下の関係や夫婦関係など、「どうも相手に伝わっている気がしないな…」と感じる場合には、お互いの価値観が異なる「立場」になっていないか考えてみることも大切かもしれませんね。
コミュニケーションが上手くいかないときには、自分の立場だからこそ感じる「考え方(価値観)」を相手に押し付けているのかも…。
あなたの日常生活でも思い当たるような場面はありますか?
『カウンセリングこころの羽・札幌本店』岡本教兵