こんにちは。札幌市にある『カウンセリングルームこころの羽』の岡本です。
日常生活で人は自分の行動と気持ち、そして新たに得た知識の中で様々な矛盾を感じて生きていることがあります。
この“矛盾”は人の心のなかで“ストレス”を発生することになるのですが…
今回は、この心の中に発生した矛盾=ストレスがどのように対処されているのかを一緒に考えてみようと思います。
◆やっていませんか?自己正当化
「自己正当化」と表現してしまうと、それは「悪いもの」ととらえてしまうかもしれませんが、今回のテーマの中では、そのように考える必要はありませんので安心してください。
…と言うのも、人は心のなかで多かれ少なかれ「自己正当化」を行なうことでストレスへ上手く対処しているからです。
私自身も若い頃を振り返ってみると、上司や目上の方から「自己正当化するな!」「言い訳するな!」と叱られたことが数えきれないほどあるような気がします…(汗)
この「自己正当化」を社会心理学では「認知的不協和」を解消しようとする働きである。
と考えます。
(今回は、カウンセリングに直結する心理学である「臨床心理学」ではなく「社会心理学」を土台にしたお話です♪)
人の心の中には、「認知」と呼ばれるこれまでの体験の中で身につけた「価値観」を持っています。
この「認知」は、頭(脳)に情報が入ると、わずか0.2秒ほどで感じてしまう「本心」「本音」とでも呼ぶべき人の気持ちです。
この認知で感じた通りに行動をとることができればストレスを感じる機会も少ないのだと思いますが、人生のなかでは本音100%の行動が難しい場面も沢山ありますよね。
例えば、上司が苦手だなと感じたからといっても、その場で早退する人は少ないと思います。
(ある程度、我慢してストレスの限界を超えたら退職してしまうことはあると思いますが…)
または、チョコレートが大好きだからといっても、一晩中食べ続けることも少ないと思います。
(こちらもストレスの限界を超えてしまうと許容範囲を超えて食べ過ぎてしまうことはあると思います…)
このように心の奥底で感じた「本心」や「本音」でも、そのまま100%で行動へうつすことは稀だと考えることができます。
この「認知」は一人一種類…というわけではなく、複数の「認知」が絡み合うことでその人の「価値観」や「好み」がつくられていきます。
◆認知的不協和とは…
では、「認知的不協和」というのは、どのような状態を指すのでしょうか。
例えば…Aさん(40代男性)は「タバコ」を吸っていたとします。
もともと、仕事のストレスをきっかけに始めた喫煙ですが、10数年も吸っているとなかなか禁煙することができません…。
そんなある日、会社の同僚から「タバコは身体に悪いから、やめた方が良いんじゃないか?」「タバコを1本吸うごとに寿命が◯分縮んでいる計算になるらしいよ?」と言われてしまいます。
そこでAさんは考えます。
① 健康のためにタバコをやめる
② ストレス解消のためにタバコを続ける
あなたがAさんの立場だったとしたら、どちらを選択するでしょうか?
今回は、仮にAさんが②の「タバコを続ける」方を選んだとします。
その選択をしたAさんの心のなかでは…
「確かにタバコが体に悪いことは分かっている…。
でも、タバコを禁煙することでストレスが溜まったり、タバコで解消していた仕事のストレスが増加したらどうだろう?
健康、健康と言うけれど、ストレスが溜まる方が健康に悪いんじゃないか?
…ということは、やめても不健康、続けても不健康なら吸い続けても一緒だ!」
この考え方が「認知的不協和」を解消した瞬間です。
なんだか似たようなケースで心当たりがありそうな内容ですよね?(汗)
つまり、「タバコを吸うことでストレス解消になっている」という認知と「タバコは体に悪い」という認知がAさんの中に共存することは「矛盾」を発生させることになり、ストレスが増加することにつながるため、「タバコをやめることも体に悪い」という新たな認知を自分の中に作り出したということになります。
この矛盾する考えのことを「認知的不協和」と呼ぶのです。
◆日常生活の中に潜む認知的不協和
似たような状況は日常生活の中によくあることかもしれません。
ここでポイントになるのは、前述のAさんの場合、「禁煙」という行動よりも「タバコの認識を変える」という考え方を変える方を選択したということです。
もちろん、中には「禁煙」を選択して成功した人も沢山いらっしゃるとは思いますが、人の傾向として「行動」を変えることは負担が大きいため、「考え方」の方を変える選択をとりやすいのが人の心理だということになります。
これは、どちらが良い悪いという話ではなく、人にはそういう傾向があるのだと知っておくことで「小さなトラブル」を「大きなトラブル」に発展させないことや課題の解決をスムーズに実現することにつながるのではないかと思うのです。
例えば、何らかの「行動」を変えようと決意したけれどうまくいかなかった…
という状況になったときに「自分を責める」よりも「人の心理的傾向性」を土台にして考えて、一番効果的に目標達成できる方法を考えてみる。
行動を変える前に「考え方」を先に変えていくことも重要なポイントと呼べるのかもしれません。
とは言え、自分で自分の考え方を変えるというのも簡単なことではありません。
自分なりに対処しようとしたけれど、上手くいかなかった…という時には、カウンセリングで対処方法のヒントを得ることも賢い対処方法なのかもしれませんね。
『カウンセリングルームこころの羽』岡本教兵